汚れの化学!汚れ落としのポイントは酸やアルカリによる中和
2018/04/22
本エントリーの目次
洗剤には、酸性の洗剤とアルカリ性の洗剤がある、ということをご存知の方は多いはず。
今回は、この洗剤の液性(酸性やアルカリ性などの度合い)を理解して洗剤を選択・使用することで、より汚れを落としやすくなるよ!
さらに洗剤代も安くなるかも!というお話。
洗剤の液性について
洗剤の話を始める前に、少しだけ化学の復習をしておきたいと思います。
液性はpH(ペーハー)で表現される!
酸性やアルカリ性の度合いは、一般的には『液性』と呼ばれます。
そしてこの液性は、pH(ペーハー=水素イオン濃度)と呼ばれる、0~14の指標で表現されます。
pHは7が中性、それより小さければ酸性、大きければアルカリ性となります。
そして、0に近ければ強い酸性、14に近ければ強いアルカリ性である、ということ。
ちなみに水道水のpHは、厚生労働省のwebサイトによると、5.8以上8.6以下と定められています。
中和って何だっけ?
酸性とかアルカリ性の話をしていると、もう一つ思い出されるのが、『中和』という言葉。
この中和とは、酸性の物体とアルカリ性の物体を(混ぜたりして)反応させて塩(えん)と呼ばれる物質を作ること。
反応後の物体のpHは、反応させる前の物体の酸の強さとアルカリの強さによって決まります。
そのため、中性(pH7)にすることを中和というわけではありません。
ただ一般的には、中和という言葉は、酸性の物体とアルカリ性の物体を混ぜて、中性(pH7)に近づけること。
こういう意味合いで使われることが多いんじゃないでしょうか。
洗剤の液性もpH(ペーハー)で表現される
さて、なぜ急に化学の復習?
こう思われた方も多いかも。
ですがこのpHが、家庭用洗剤の液性の表現に大きく関係しているのです。
というのも家庭用の洗剤は、そのpH値に応じた液性を表記しなさい!
と家庭用品品質表示法で決められているから。
その内訳は以下のとおり。
- 3.0未満の場合:酸性
- 3.0以上、6.0未満の場合:弱酸性
- 6.0以上、8.0以下の場合:中性
- 8.0を超えて、11.0以下の場合:弱アルカリ性
- 11.0を超える場合:アルカリ性
つまり液性が酸性と書いてある洗剤の場合は、ふむふむ、これはpHが3未満だから、かなり強い酸性だな。
こう思ってOK!
まぁこんなことを考える人は、あまりいないと思いますけど…。
汚れにも酸性とアルカリ性がある!
冒頭で酸性の洗剤とアルカリ性の洗剤がある、ということをご存知の方は多いはず。
なんて書きましたが、実は汚れにも洗剤と同様に、酸性の汚れやアルカリ性の汚れ、というものがあります。
酸性の汚れ
主な酸性の汚れは以下のとおり。
- 油汚れ
- 食べこぼし
- 手あか
- 湯あか
- 皮脂
- 生ゴミの臭い
- 腐敗臭
アルカリ性の汚れ
主なアルカリ性の汚れは以下のとおり。
- 水あか
- 尿汚れ・尿石
- 石けんカス
- 電気ポット内部の汚れ(水道水中のカルシウム汚れ)
さて、ここまでに出てきたキーワードから、そろそろ何となく察しがついた!
という方もいらっしゃるはず。
ズバリ、結論。
汚れは洗剤で中和すると、落ちやすくなります!
汚れは洗剤で中和すると、よく落ちる!
つまりこういうこと。
酸性の汚れには、アルカリ性の洗剤を使う!
アルカリ性の汚れには、酸性の洗剤を使う!
こうすることで、汚れがとっても落ちやすくなる!というわけ。
そして市販の洗剤は、あらかじめ用途に応じて汚れが落ちやすい液性に設定されています。
たとえば油汚れ(酸性の汚れ)が付きやすい、ガスコンロ回り用の洗剤はこういったアルカリ性の製品。
尿汚れ(アルカリ性の汚れ)が付きやすいトイレの洗剤には、このような酸性の製品といった具合。
そのため用途に合った洗剤を選ぶことがとっても重要です。
それってつまり中性洗剤は、洗浄力が弱いってことじゃ…?
洗剤の中には、中性洗剤と呼ばれるタイプの洗剤もありますよね。
あれは文字通り、中性の洗剤。
先ほど書いた、家庭用品品質表示法に基づいた表現をすると、pH6.0以上かつ8.0以下の洗剤です。
良くも悪くも中性ですから、中和効果を発揮できず、酸性の汚れにもアルカリ性の汚れにも効果がいまいちである、というのは事実。
ではなぜ中性洗剤が販売されているのか。
それは使用するシーンを思い浮かべてみると分かると思います。
中性洗剤と言われて多くの方が思い浮かべるのは、こういった台所用洗剤でしょう。
実際、台所用洗剤は中性の製品が多いです。
これはしっかりと洗剤を洗い流さずに、誤って食べてしまう危険性がある、また中性ではない洗剤は手荒れを起こしやすいなどの理由から。
つまり健康のために、洗浄力よりも安全性を重視した結果、というわけ。
界面活性剤で油汚れに対応!
中性洗剤は中性のため、そのままでは食器に付着した油汚れを落とす力は強くありません。
そこでこの油汚れには、界面活性剤と呼ばれる成分を追加して対応しています。
この界面活性剤には、油と水がよく混ざり合うようにする乳化作用があります。
これにより、油を水もろとも洗い流すことで油汚れを落とす、という寸法です。
最近は中性ではない台所用洗剤も!
以前は台所用洗剤 = 中性でしたが、最近は弱酸性や弱アルカリ性の台所用洗剤も販売されています。
それぞれの違いは、ざっくりというとこんな感じ。
洗浄力の強さ
中性 < 弱酸性 < 弱アルカリ性
手荒れのしにくさ
弱アルカリ性 < 中性 < 弱酸性
つまりたとえば、弱アルカリ性は洗浄力は強いが、手肌への攻撃性も強く、手荒れしやすい、というわけ。
そのため何を優先するかで、使う洗剤を決めると良いでしょう。
クエン酸とか重曹を使う節約掃除法があるけれど…
よくクエン酸や重曹を使う掃除法が、節約掃除法として紹介されていることがあります。
はるるも以前に、食洗機をクエン酸でキレイにする方法などをご紹介しています。
このクエン酸や重曹を使う掃除法も、実は液性を利用した掃除法です。
クエン酸はもちろん酸性!
クエン酸は酸というくらいですから、もちろん酸性。
そのため、水あかなどのアルカリ性の汚れには効果てきめん!
重曹はアルカリ性!
重曹は、クエン酸とは反対にアルカリ性。
つまり油汚れや湯あかなどの酸性の汚れに効果大!
クエン酸や重曹で節約掃除!
市販の洗剤でも安いものはありますが、クエン酸や重曹のコストパフォーマンスはそれ以上。
そのため汚れと反対の液性の、クエン酸あるいは重曹を掃除に使うことで、掃除用洗剤にかかる費用を減らすことが可能、というわけ。
洗剤や汚れの液性を理解することで、簡単節約お掃除!
たいていの場合はトイレ用、浴室用など、用途に合った洗剤を選べば、液性も適切なものを選べることが多いでしょう。
ですが台所用洗剤のように、特定用途向けの洗剤であっても液性が複数あるケースも。
そんな時、洗剤や汚れの液性による特製を理解しておくと、適切な洗剤を選べるはず。
洗剤や汚れの液性を理解し、適切な洗剤(あるいはクエン酸や重曹)を使うことは、汚れを簡単楽チンに落とすだけでなく、掃除にかかる費用の低減にも貢献します。
今まで液性なんて気にしたことがなかったよ!
という方は、今後の洗剤選びの際は、ぜひ液性も考慮に入れてみてください!