PCにグラフィックボード(グラボ)って必要なの?
2018/04/22
本エントリーの目次
これはオーバースペックじゃない?
昨日友人から、このパソコンを買おうと思うので、構成を確認してほしい、というメールが届きました。
その内容をまとめると、以下のとおり。
- 主な使用目的は、ExcelやWordでの資料作成、YouTubeによる動画の閲覧、ネットの閲覧。
- 画像編集や映像編集などはしない。
- デスクトップ型を希望。
- モニターは現在使用中のものを流用するので、必要ない。
- スペックに問題はないか?
- もう少しどこかをスペックダウンさせて、安くできないか?
- 構成は添付ファイル(とあるメーカーのオンライン見積もりのスクリーンショット)参照。
さっそく添付された構成内容を確認してみると、いわゆるBTO(Build to Order)と呼ばれる、自分で構成を決めるタイプのパソコンで、税込約15万円。
これはかなりのハイスペック…。
というか、オーバースペックじゃないかと…。
価格の1/3はグラフィックボード!
構成を把握したはるるは、さっそく友人に電話をし、事情聴取。
はるる『あれ、見たんだけど、何のゲームをするの?』
友人『ゲーム?ゲームなんてしないよ?なんで?』
はるる『グラボ、あ、グラフィックボードがついてるじゃん。だからゲームをするんじゃないの?』
友人『えっ?いやいやあれがないと画面が映らないじゃん。どうせならキレイな画質でYouTubeを見たいから、あれにしただけだよ。』
はるる『…あれがなくても画面は映るよ?それにグラボを付けたところで画質が上がることはないよ?』
友人『…。本当に?』
はるる『うん、本当。ちなみにグラボをはずすだけで、5万円ぐらいは安くなるね。』
友人『!?それは助かる!』
はるる『他の部分もオーバースペック気味だから、バランスを整えると、多分8万円くらいの構成でもサクサク動くと思う。その構成を送ろうか?』
友人『頼むわ!いやー助かる助かる。なるはやで!(なるべくはやく)』
はるる『りょーかい!じゃ、また~。』
ちなみにこちらが、友人がパソコンに付けようとしていたグラフィックボードの同等品。
NVIDIA(エヌビディア)というメーカーさんのGTX970というGPUを搭載したモデルで、2015年4月現在の価格は4.5~6万円前後。
ハイエンドよりのモデルで、たいていの3Dゲームはそこそこの画質設定で動くはず。
ただ大抵の人にとっては、間違いなくオーバースペックで、宝の持ち腐れ、お金の無駄遣いになってしまいます。
そして電話を切って、友人のパソコンの構成を検討していると、ふとこう思いました。
勘違いで、わざわざ高いパソコンを購入してしまっている人がいるのかも…
今回のケースで言えば、グラフィックボードがないと、画面に映像を映せないので必要だ!
という勘違いから、グラフィックボード付きの高額のPCを購入しようとしていたように、です。
そこで今回は、PCにグラフィックボード(グラボ)って必要なの?というテーマでお送りします。
グラフィックボード(グラボ)って何?
グラフィックボードは、モニター(ディスプレイ)に表示すべき内容を計算し、表示のための命令を出す部品。
つまり先ほど友人が言っていた、『あれがないと画面が映らない』というのは正しいのです。
ただ後述する理由により、今時のPCを普通に使用する分には、多くのPCではまったく必要のない部品であり、グラフィックボードがなくても画面が映る、というのが現状。
またグラフィックボードは略してグラボ、と呼ばれることも多いです。
グラフィックボードの価格を決めるのは、GPU
グラフィックボードはそれ自体が、部品の集合体です。
それはたとえばGPUや、冷却ファンなど。
これらの中で、グラフィックボードの価格を決めるのは、ボードに搭載されているGPUのランクです。
GPU(Graphics Processing Unitの略)はグラフィックボードの主要部品で、画面表示に必要な2D(平面)や3D(立体)の計算処理を行います。
そしてグラボを開発している各メーカーは、このGPUを使用して自社のグラボを開発している、というわけ。
たとえば以下の製品の場合、NVIDIA(エヌビディア)というメーカーさんのGTX970というGPUを搭載したグラボを、ASUSTek社が開発・販売している、という形です。
同じGPUを使用したモデルの場合、グラボメーカー・製品による性能及び価格の差はあまりない、というのが一般的。
ですが一部のモデルでは、同じGPUでも高い電圧と強い冷却性能を与え、計算能力を向上させている商品も。(オーバークロック製品)
そういったモデルでは、通常のモデルに比べ多少価格が高くなります。
尚、GPUのメーカーでは、NVIDIA(エヌビディア)とAMDの2社が有名。
またCPUで有名なIntel社も、オンボードGPU(後述)を作っています。
ちなみにはるるは、AMD(旧ATI)の『RADEON』というシリーズのGPUがお気に入り。
グラフィックボードがなくても画面が映るわけ
さて、先ほどはるるは、グラフィックボードがなくても画面が映る、と書きました。
それは以下のような理由から。
オンボードグラフィックが搭載されている!
グラフィックボードがなくても画面が映るのは、ズバリGPUが他の場所に搭載されているからです。
マザーボードに映像出力端子(VGA端子 = ミニD-Sub 15ピン、DVI、HDMI、DisplayPort)が付いている場合が、これに該当します。
それらのマザーボードを搭載したPCでは、このオンボードグラフィックを使用して、画面の表示に関する処理を行っています。
その主な方式は以下の2つ。
マザーボードにGPUが搭載されている
こちらの方式では、パソコンの主要部品であるマザーボード(厳密にはチップセット)にGPUが搭載されています。
そのためグラフィックボードが必要ありません。
GPU内臓CPUだから
最近、オンボードグラフィックの主流になりつつあるのが、こちらの方式。
たとえば下記製品では、Intel® HD Graphics 4600というGPUを、CPU(Central Processing Unitの略)と呼ばれる、PCが計算に使用する中心部品に内蔵しています。
そのためこちらの方式でも、グラフィックボードが必要ありません。
これらの方式は内蔵GPUと呼ばれています。
またCPUにGPUが内蔵(統合)されているタイプのGPUは、iGPU(integrated GPU)と呼ばれることもあります。
(内蔵GPU = iGPUという説もありますが、CPU内蔵GPU = iGPUとする意見が多いように思います。)
これに対してグラフィックボードに搭載されている単体のGPUは、iGPUと区別するためにdGPU(discrete GPU)と表現されることもあります。
ほとんどの場合、グラフィックボード(グラボ)は必要ない!
これが今回、はるるが一番伝えたいこと。
ほとんどの場合、多くの方にとってグラフィックボード(グラボ)は必要ありません!
そのため、本来は不必要なグラフィックボードを搭載した高額なPCを買うのは、とってももったいないことなんです!
オンボードグラフィックとグラフィックボードの違い
GPUが行う画面表示に関する処理は、大きく2D(平面)と3D(立体)に分かれる、というのは先ほど書いたとおり。
このうち、オンボードグラフィックとグラフィックボードの処理性能で、最も違いが出るのが、3D(立体)に関する処理性能です。
これに対し、2Dグラフィックスの処理性能は、通常はあまり差がありません。
ただ後述する一部特定用途では、2D性能でも差が出ます。
つまり特定用途を除いては、3Dグラフィックスの処理性能の違い = オンボードグラフィックとグラフィックボードの違い、というわけ。
パソコン作業の多くでは、3D性能はほとんど必要ない!
通常のパソコン作業の多くでは、3D性能はほとんど要求されません。
そのため処理の大半が、2Dグラフィックスについてのものとなります。
先ほど、友人が挙げていたパソコンの使用用途である、ExcelやWordでの資料作成、YouTubeによる動画の閲覧、ネットの閲覧。
これらも、3Dグラフィックスの処理性能は必要ありません。
2D性能は、オンボードグラフィックでも十分足りる!
では、2Dグラフィックスの処理性能はどうか。
というと、現在のオンボードグラフィックでは、十分な性能があるものがほとんど。
つまりまとめると
ここまでの話をまとめると。
3D性能が必要な作業をする方、一部特定用途に使用する方以外の場合、グラフィックボード(グラボ)は必要ない!
だから高いお金を払ってグラボ付きのPCを買うのは、もったいないよ!
つまりこういうこと。
尚、グラフィックボードには、動画再生支援機能が付いており、動画再生中のCPU負荷を軽減してくれる商品もあります。
ですがそれを目的に、わざわざ高額なグラフィックボードを買う必要はほとんどないと思います。
今時のPCであれば、オンボードグラフィックでもたいていの動画再生には支障がないはずです。
グラフィックボード(グラボ)が必要なのは、どんな人?
さてここまでで、大半の方にとってはグラボは必要ない!
というのが、よく分かったのではないかと思います。
ではどんな人がグラボを必要とするのか、これも気になりますよね。
PCでゲームをする人
これは、先ほどのはるると友人の電話の内容から察しがついた、という方もいらっしゃるかもしれませんね。
意外と知られていませんが、実はPCでゲームをすることが可能です。
それはたとえばこんなゲーム。
実はこれ、はるるもはまっていたゲームで、とっても面白いです。
そしてこういったPC用のゲームの中には、高い3D性能を要求するものがあるんです。
そのため、オンボードグラフィックスの3Dグラフィックス処理性能では、性能不足になりがち。
その結果、画面がカクカク(コマ落ち)したり、CTD(Crash To Desktop)と呼ばれる強制終了が頻発し、快適にゲームを楽しめない、というわけ。
こういった事態を防ぐために、PCでゲームをする方には、グラフィックボードが必要でしょう。
画像編集を行う人
画像編集と言えば、Adobe社のPhotoshopやIllustratorが有名です。
これらのソフトウェアではGPUの演算能力を使い、処理を高速に行う機能が備わっています。
また製図作業に使用するCADソフトウェアにも、同じような機能が実装されています。
そのため、これらのソフトウェアを使って画像編集を行う方は、グラフィックボードを搭載したPCを使用した方が、大幅に作業効率が上がることも。
これが先ほど書いた特定用途。
尚、一般的に販売されているグラボ(のGPU)は、そのほとんどがゲーム用。
そして、NVIDIA社は『GeForce』、AMD社は『RADEON』というブランドで販売しています。
ですが画像編集・CADソフトでOpenGLという機能を有効にしている場合は、OpenGLの処理に最適化された(GPUを搭載した)グラボを使用することで、より効率的な作業が可能になります。
こちらはNVIDIA社では『Quadro』、AMD社は『FirePro(以前はFireGL、FireMV)』というブランドで販売しています。
ちなみにハイエンドになると、40万円を超える商品もあり、大変高価なことでも有名です。
ハイエンド構成のPCを使用する人(ハイエンド構成のPCでは、オンボードグラフィック非対応 = グラボが必要な場合があります!)
先ほどマザーボードに映像出力端子が付いていれば、オンボードグラフィックがマザーボードかCPUに内蔵されているため、グラフィックボードは不要と書きました。
ですがハイエンド(ハイスペックを追求した)構成の場合、マザーボードに映像出力端子が一切搭載されていない場合があります。
そのためハイエンド構成のPCを使う方の場合、映像出力のために別途グラフィックボード(グラボ)が必要となります。
GPGPUに使う人
GPGPUとは何ぞや、というと。
GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units; GPUによる汎目的計算)とは、GPUの演算資源を画像処理以外の目的に応用する技術のことである。
(Wikipedia-GPGPUより引用)
GPUはCPUに比べ、単純な計算を並列に繰り返し行うことが得意である、という特徴があります。
これを利用すれば、計算量の多い計算をCPUを利用した場合に比べ、より早く終わらせることが可能です。
そういった用途でGPUを使いたい、という方にも、グラフィックボードは必要でしょう。
尚、この用途向けには、NVIDIA社からTeslaというシリーズのGPUが発売されており、Quadro以上に高い価格設定となっています。
たとえば以下のTeska K80は、2016年6月現在85万円を超える価格で販売されています。
さすがにこの価格帯になってくると、個人で購入するのは難しいでしょう。
そのため個人ユーザーがGPGPU目的でグラフィックボートを使う場合、ゲーム用のハイエンドよりのグラフィックボートを複数枚構成で使用することが多いのが現状です。
ただ複数のGPUを有効に使用し、性能を使い切るGPGPUプログラミングは、GPUを1つだけ使用する場合に比べて難易度が上がります。
最近ではGPGPUの主な用途の一つとして、ディープラーニング(深層学習)が挙げられます。
たとえば10層程度のネットワークの演算をCPUで行った場合、かなりたくさんの時間がかかります。
ところがこれをGPUを使って行うと、CPUの1/10以下の時間で演算が終わります。
ディープラーニング用のGPUを購入する際はGPUの性能だけでなく、VRAM(グラボに内蔵されているメモリー)の搭載量にも注意が必要です。
演算中にVRAMの搭載量が足らなくなるとエラーが発生します。
グラフィックボードが必要かどうかは、よく検討して!
ここまでご説明したとおり、大多数の方にとっては、グラボは不必要であることが多いです。
先ほどの友人の例では、不要なグラボを外すだけで、PCの価格が5万円も下がり、15万円から10万円に安くなりました。
この事実からも、これがいかにもったいないことか、よく分かりますよね。
そのためPCを購入する際にグラボが必要かどうかは、慎重に検討することをおすすめします!