情報処理技術者資格を取得しても、実務で役に立たない?
2018/04/22
本エントリーの目次
先日、仕事の商談先に向かう電車の中でのこと。
途中の駅で、若々しいスーツ姿の男性が2人乗り込んできて、はるるの隣に座りました。
はるるは本を読んでいたのですが、2人は座るや否や、かなり大きめの声で話を始めました。
そのため集中できないので、読書を止め、窓から見える外の景色を眺めていました。
するとほどなくして、2人が興味深い話を始めたので、盗み聞きはよくないと思いつつも、少し聞いてみることに。
情報処理技術者の資格なんて取得しても意味がないよ!実務では何の役にも立たない!
話を聞いてみると、どうも2人は入社1年目の(ソフトウェア開発業?の)技術職の同期みたい。
そして上司からのすすめ、もしくは会社方針?で、10月に行われる基本情報技術者試験を受けなければならなくなったそう。
さらに話を聞いていると、2人のうちの片方の方(仮にAさんとする)が、このようなことを言ったわけ。
情報処理技術者の資格なんて、取得しても意味がないよ!
実務では何の役にも立たない!
そんなことよりも早く実業務をこなして、力を付けたいよな!
そんな資格を取るための勉強の時間がもったいない!
それを受けたもう片方の方は、というと。
まぁそうだけど、取れって言われたんだし、やるしかないよね。
面倒だけどさぁ。
それに合格すれば、報奨金と資格手当が出るわけだし、それ目当てに頑張るしかないよ。
実務では役に立たない!と言われているけれど
たしかに、情報処理技術者の資格なんて取得しても実務では役に立たない!という意見が多数ある。
というのは、はるるも知っています。
では反対に、情報処理技術者の資格を取得して実務で役に立ったよ!
という意見がないのかというと、正直なところ、はるるはあまり聞いたことがありません。
そこで今回は、情報処理技術者試験の受検を検討している方の参考になれば、ということで。
情報処理技術者の資格を取得して実務で役に立っているよ!
こう考えている、はるるの事例をご紹介したいと思います。
情報処理技術者試験とは
まずは情報処理技術者試験とは何ぞや、というと。
情報処理技術者試験は、「情報処理の促進に関する法律(昭和45年法律第90号)」第7条の規定に基づき、経済産業省が情報処理技術者としての「知識・技能」が一定以上の水準であることを認定している国家試験である。 情報システムを構築・運用する「技術者」から情報システムを利用する「エンドユーザ(利用者)」まで、ITに関係する全ての人に活用される試験として実施している。
(Wikipedia – 情報処理技術者試験より引用)
というわけで、ITに関わる人の知識・技能が一定レベルにあることを示す国家資格。
そのため資格報奨金(合格祝いとして、1回だけもらえるお金)や資格手当を設定しているIT関連企業が多いです。
また資格の取得が昇進の条件になっている企業もあるそう。
ちなみにはるるの勤務先でも、この資格報奨金や資格手当が設定されています。
情報処理技術者試験を受検したわけ
はるるは、基本情報技術者や応用情報技術者(旧ソフトウェア開発技術者試験)などの情報処理技術者の資格をいくつか取得している有資格者です。
受検したきっかけは、先ほどの彼らとほとんど変わりません。
強いて言えば、入社前の段階から、入社後に必ず取得してもらいますよ。
と会社側から事前に言われていたので、それを承知の上で入社した、ぐらいでしょうか。
でもこれって、よく考えてみると結構違うのかも…。
よーし!入社したら、すぐに実務をバリバリやって、活躍するんだ!
という意気込みと共に入社した方にとっては、まずは資格を取りましょう。
となれば、モチベーションが下がってしまう方がいらっしゃってもおかしくはありません。
先のAさんはもしかしたら、このタイプの方だったのかもしれませんね。
情報処理技術者試験が実務で役に立たない、と言われるわけ
情報処理技術者試験が実務で役に立たない。
こういわれる理由として、はるるがよく聞くのは、こんな意見。
特定のOSやアプリケーションに内容が絞られていない
情報処理技術者試験は国家試験という特性上、WindowsやLinux、UNIXといった特定のOSに関する問題は出題されない。
同様にMicrosoft OfficeやVisual Studio、Eclipse、NetBeansといった特定のアプリケーションに関する問題も出題されない。
そのため実務に即しているか、と言われるとそうではない、という意見。
最新の技術に対する知識があることを、証明するものではない
これは以下のような理由によるもの。
更新の必要がない
ITを取り巻く技術は日進月歩。
数年前まではガラケーが全盛だったにも関わらず、最近ではスマホが急速に普及している。
このように技術は常に進歩しており、IT関連業務に従事している人間は、常に勉強を続けて、最新技術を理解していく必要がある。
にも関わらず、情報処理技術者試験ではLPICなどのように再認定(更新)制度があるわけではない。
これでは最新の技術に対する知識があるのかどうかを証明できていない、という意見。
出題内容が古い
情報処理技術者試験で出題される問題は古い内容が多い。
現在ではほとんど使われていない技術が出題されることも。
これでは最新の技術に対する知識をはかれていない、という意見。
すぐに実力が付くわけではない
実務に即した出題ではないため、勉強内容も必然的に実務に即さない内容となる。
すると当然『資格取得のための勉強』になりがちで、実務をすぐにこなせるようになるための実力がつくわけではない、という意見。
どれも一理ある
ここまでに挙げた『情報処理技術者試験が実務で役に立たない』といわれる理由は、そのどれもがデタラメというわけではありません。
むしろふむふむ、なるほど。
こう思える内容ばかりで、どれも一理あると思います。
ですがそれでもはるるは、情報処理技術者試験を取得したことは、実務で役に立っていると思っています。
実務で役に立っていると思っているわけ
はるるが情報処理技術者の資格を取得したことは、実務で役に立っている。
このように思っているのは、以下のような理由から。
基本的な考え方が身についた
情報処理技術者試験が実務に即していない理由として挙げた、特定のOSやアプリケーションに内容が絞られていないという点。
これは逆に良かったと思っています。
というのも、特定のOSやアプリケーションによらない、IT関連業務に関する共通した基本的な考え方を学ぶことができたから。
特定のOSやアプリケーションに関する勉強をすれば、たしかに実務ですぐに役に立つでしょう。
ですが特定のOSやアプリケーションでしか使えない技術、あるいは使いにくい技術というのはたしかにあります。
そんな時には当然、特定のOSやアプリケーションによらない技術が必要になります。
だから知らなくて困ることはあれど、知っておいて困ることは何もないはず。
技術の背景を考えるようになった
情報処理技術者試験の中には、かなり低レベル(= 機械に近い、ハードウェアよりという意味の)な内容についての知識を問う問題もあります。
これは実務で高水準言語ばかりを使っていると、意識しにくい内容だと思います。
ですがアッセンブラなどの低水準言語を使っていると、絶対に必要になってくる知識でしょう。
そして今使っている高水準言語の背景には、こういった(低水準言語の)技術があるんだな。
と、しっかりとはるるが実感できたのは、情報処理技術者試験に関する勉強をしたおかげ。
ある技術の裏にはその基礎となった技術があるとしっかりと意識してからは、新しい技術を知る度に、その背景が気になるようになりました。
それは必要な基礎技術であったり、なぜその技術が必要になったのか、という理由や歴史的な背景など。
こういった考え方は、IT関連業務に従事する者(特に技術者)にとっては、とっても重要なことだと思うのです。
古い(あるいは基礎的な)技術を学ぶことができた
情報処理技術者試験の問題の中には、技術的に古い内容もあります。
その中には、今日ではほとんど使われてないものもあれば、今でも使われているものも。
後者はよく枯れた技術、なんて言いますね。
別に悪い意味ではなく、安定性がある、既にすべての問題が解消されている、という意味です。
こういった古い技術や基礎的な技術、枯れた技術を学ぶ機会を得た、というのも非常に良かったと思います。
それはなぜか。
たとえば新しい技術を知ったとします。
でも新しい技術というのは、よほど革新的なものでないかぎり、そのほとんどが既存技術の応用や組合せによるもの。
そのため既存技術に対する基礎知識があると、理解が容易になることが多いのです。
だから今は使われていないような古い知識であっても、それを勉強することは決して無駄にはならないのです。
日常的に勉強をするきっかけになった
はるるの場合、先に挙げた技術の背景を考えるようになったことにより、常になぜ?どうして?という意識が働くようになりました。
その結果、好奇心から日常的に勉強する習慣がついた、というのも良かった点だと考えています。
先にも書いたとおり、ITを取り巻く技術はすごいスピードで常に進歩しています。
そのため情報処理技術者試験の合格のために勉強したことで、社会人生活の早期に日々勉強する習慣がついたことは、良かったと思うのです。
無資格者よりは有資格者の方がいい
人間の技術力を定量的に評価するのはとても難しいことです。
ですがたとえばあなたが新卒採用の面接官だったとして。
英語が得意です!という方よりも、TOEICのスコアが950です!
という方の方が、ふむふむ、たしかに英語能力が高いんだな、という説得力を感じますよね。
そのため、後者を採用したいと感じる方がほとんどでしょう。
つまり情報処理技術者の資格を持っていれば、この人は一定以上の技術水準がある技術者です!
という第三者への証明になります。
そういった、この人はたしかな技術を持った人なんだ!
という安心感が、商談の際に仕事の受注の決め手になる可能性だって、十分にあるはず。
実務に直接役に立つ、とは言えないかもしれないけれど
さて、ここまではるるが挙げた、実務に役立っていると考えた理由。
そのどれもが、実務に直接役に立っている、と言い難いのは事実です。
また、資格取得のために勉強した効果が実務ではすぐに現われない、ということも多いでしょう。
ですがそのすべてが間接的には実務に役に立っている、だから決して無駄ではない!
こう思っているわけです。
情報処理技術者試験を受検しようと思ったけれど、実務で役に立たないらしいし、やっぱりやめようかなぁ。
なんて思っている方もいるのかもしれません。
ですがそれが実務で役に立たないと感じるかどうかは、人それぞれ。
実際、はるるのように役に立った、と感じている人もいるわけですから。
そのため、まずは少し受験に向けて勉強してみてはどうでしょうか。
それで役に立たなそうだと思ったら、やめればいいのです。
もしかしたらはるるのようにとっても役に立った、取得して(そのための勉強をやって)良かった!
こう思えるかもしれませんよ~。
その他、考えたこと
今回、このエントリーを書くにあたって、他にも2点考えたことがあります。
資格を取得することで、給料をもらっているわけではない
情報処理技術者試験にかぎらず、資格試験に合格すれば資格手当がもらえる、という会社さんはたくさんあると思います。
ですがここで勘違いしてはいけないのは、資格取得によって給料が発生しているわけではない、ということです。
給料はお客様に何らかの価値を提供し、その対価としていただくもの。
資格手当をもらえるのは、その資格取得に向けた勉強などを通して得た知識や技術によって、お客様により大きな価値を提供できるはず。
その結果、対価をたくさんいただける、その一部を手当てで給料に反映しよう、というもの。
これは実ははるるも忘れがち。
でもしっかりと意識して、働かないといけないところなんだと思います。
勉強に終わりはない
資格試験の勉強には、合格という一応のゴールがあります。
ですが情報処理技術者試験に関して言えば、技術の進歩には終わりはありません。(おそらくは。)
そして進歩に終わりがない以上、勉強に終わりはないのです。
あるとすれば、それは自分で終わりを決めた時でしょう。
はるるは、IT関連業務に従事する人間の1人です。
まだまだ勉強することはたくさんあるし、今後もどんどん増え続けていきます。
それは少し大変だとは感じますが、それ以上にワクワクしています。
今後どんな面白い技術に出会えるんだろうって。
本当はそれを自分で開発出来たら、もっといいんでしょうけどね。
それには、もっともっと勉強して技術力をつけないといけません。
だからはるるの勉強の日々は、当分は終わらなそうです。