自作PCでCPUの初期不良はあり得るの?その具体的な症状は?
2018/04/24
本エントリーの目次
自作PC(自組PC)を組み立てるために各所の構成パーツの検討をし、各部品をPCショップやネット通販サイトで購入。
届いたパーツの組み立ても終えて、あとはOSのインストールと環境の構築・移行で完了だ!
という段階で、ときどきこんなことが起こります。
あれれ?うまく動かない…
おかしいなぁ。
順調に組み立てを終えて、配線も正しく接続したはずなのに…。
どうしてうまく動かないんだろう…。
メーカー製のPCを家電量販店で購入した場合や、PCショップ・ベンダー製のPCをネット通販サイトで購入した場合には、メーカー側でPC本体の組み立て、OSのインストール(OSなしでの出荷をのぞく)、そして動作確認まで行ってから出荷されるのが一般的。
そのためこんなことはまず起こり得ません。
ところが自分で各種パーツの組み立てを行う自作PCでは、意外とよく起こることだったりします。
そしてそれはたいていの場合、CPUの近くのEATX12Vに電源を接続し忘れているだとか、メモリーが正しくささっていない、といった組み立て時の作業ミスによるものがほとんど。
そのためPC各所のパーツ同士の接続や配線を確認し、作業ミスを改善すれば問題は解消し、正常に起動することが多いです。
ところが稀に組み立て時の作業ミスがないにもかかわらず、正常に動作しないことも。
それはたとえば相性問題。
相性問題による動作不良
これはパーツそれぞれに問題はないものの、併せて使用すると問題を起こすことで、特にマザーボードとメモリー間で起こりやすいです。(もちろんグラボとマザーボードなど、他のパーツの組み合わせでも起こります。)
相性問題については、マザーボードメーカーが動作確認済みのメモリーのリスト(QVL =Qualified Vendors Listと呼ばれています)をマザーボードごとに公開しているので、そのリストに掲載されているメモリーと組み合わせれば、ある程度回避可能となります。
初期不良による動作不良
もう一つ、組み立て時の作業ミスがないにもかかわらず、正常に動作しないケースとして起こり得るのが各パーツの初期不良です。
パーツ自体に問題があるので、組み立て作業が正しいとしても、正常に動作しないのは当然ですよね。
そしてこの問題の厄介なところは、パーツが届いて実際に組み立てをしてみないと、初期不良に気づけないこと。
さらにどの部品の初期不良が原因でPCが正常に動作していないのかを調べる作業に、それなりの時間と手間がかかることも厄介なところでしょう。
この初期不良についてはどのパーツでも起こり得ますが、よく聞くのはマザーボード、メモリー、電源あたりでしょうか。
ネット上でもこれらの初期不良については、それなりに情報を見かけます。
それに対してほとんど見かけないのがCPUの初期不良です。
CPUの初期不良の発生頻度は低い?
CPUの初期不良については、ネット上で情報を調べるとまったくゼロというわけでないようですが、他のパーツに比べて情報が少なく、その発生頻度はかなり少なそうです。
またはるる自身、CPUの初期不良については他のパーツに比べて極めて少ない、というかほぼゼロに近い、という認識をこれまでの経験から持っていました。
これは、これまでかなり多くの台数の自作PCを組み立てていて、一度もCPUの初期不良を引きあてたことがないこと。
また仕事がら長いこと数百台以上の法人向けPCやラックサーバー、ストレージサーバー、スイッチなどのネットワーク機材、NAS製品を管理してきましたが、CPUの初期不良にはお目にかかったことがない、といったことからです。
(そもそも法人向けのサーバー製品は初期不良自体が少ないですが、テスト運用中にハードウェア監視ツールがECCメモリーのエラーを検出した、なんてことはありました。)
ところが少し前に、この『CPUの初期不良については他のパーツに比べて極めて少ない、というかほぼゼロに近い』という認識が変わる出来事があったんです。
そしてそれにより、『CPUの初期不良については他のパーツに比べて極めて少ない、というかほぼゼロに近いが、たしかに起こり得る』という認識に変わりました。
といいますのも。
CPUの初期不良に遭遇しました!
いや~、あるものなんですね、CPUの初期不良って。
詳細は後述しますが、PCショップの店員さんも、こういったCPUの不良は自分自身はじめて見ました、とのこと。
そのためはるるよりも、非常に多くの一般向けPCのトラブルシューティングを行ってきているであろう、PCショップの店員さんでさえもはじめて、というくらいCPUの初期不良は珍しいことなんでしょう。
そこで今回は、はるるが遭遇したCPUの初期不良について、その具体的な症状などをご紹介します!
CPUの初期不良発覚までの顛末
問題が起きたPCは、はるるが少し前に構成を検討し、自分で組み立てを行った自作PCです。
構成の検討を終えたあと、パーツごとに各種ネット通販サイトの安いお店で購入し、必要なパーツを一式そろえています。
そのため相性保証などは一切つけておらず、保証については製品それぞれに付帯する1~数年前後の製品保証のみとなります。
そしてパーツが一式届いた翌日に組み立て作業を実施。
POSTは正常に完了し、UEFI BIOSの設定画面も正常に表示されるのを確認!
まずはマザーボードにCPUとCPUクーラー、メモリー、電源を仮接続し、正常にPOSTすることを確認。
UEFI BIOSの更新実行後、UEFI BIOSの設定画面でバージョンを確認。
さらにCPUやメモリーについて、正常に認識できていることも確認。
最後にメモリーのテストを行い、すべてのメモリーとマザーボードのメモリースロットに問題がないことも確認。
はるるの場合組み立ての際は、いつもであればこのあとに、他の部品も仮接続してそのままOSのインストール、ドライバーの適用まで行ってからPCケースに入れることが多いです。
これは、その他の部品に初期不良や相性問題が起きていないかを確認するため。
ケースの形状やマザーボードの各種コネクターの配置、CPUクーラーの形状などによっては、一度ケースに入れてしまうと、各コネクタの抜き差しがしづらかったり、部品が外せなくなることがあります。
たとえば大きな空冷のCPUクーラー+ ハイエンドグラボをSLI構成にした場合に、PCI Expressのロックの爪にアクセスしにくくなって、グラボが外しにくいとかですね。
まったくの余談ですがつい先日も、Intel Core i7 6950X + ASUS X99-E WS + CRYORIG H5 UNIVERSALの組み合わせでPCを組んだところ、CPUソケット左下に配置されたPCI Express用の追加電源コネクター(下図D)の配線の取り回しを変えるのにかなり苦労しました。(これは問題が起きたPCではありません。)
ケースに入れたままだと、CPUクーラーとグラボを外さないと手が入りにくく、このコネクターへのアクセスはしにくいんですよね、これ…。
(ASUS X99-E WS – マニュアルより引用)
話が少しそれましたが、ケースに入れたあとに問題が発覚すると面倒だ!
だからPCケースに入れずに確認できることは、先にやってしまおう!
というのが、はるるのいつもの組み立て手順だったんですが…。
実は組み立てを行った翌日は、友人が自宅に遊びに来る予定だったもので。
さっさとケースにしまって、部屋の片付けをしたかったんです。
そのためPOSTが正常に完了したし、大丈夫だろう!
と判断して、そのままケースに入れてしまったわけ。
今思えばこの時点でしっかりと確認していれば、あとでもう一度ケースから出す必要がなかったのに…。
Windows 10 Professionalをインストール中にブルースクリーンが発生…
さて、以上のような理由から、POSTの確認を終えただけの状態でPCケースに各パーツを格納し、USBメモリーでWindows 10 Professionalのインストールを開始したところ、その途中でまさかのブルースクリーン発生。
この時点では、オーバークロック関連の作業は一切行っていない、まったくの初期設定状態です。
XMPメモリーを搭載していましたが、もちろんプロファイルの設定も変更しておらず、定格クロックで動作している状態でした。
再度OSのインストールを試してみるも、まったく同じ進捗具合・画面でブルースクリーンが発生。
再現性ありです…。
その後1回、計3回実行し、状況は変わらず。
まったく同じ画面でブルースクリーンによる強制再起動が起こります。
最近のWindows OSのインストーラーでは、インストールの最序盤に左から右へ白い帯(プログレスバー)が伸びていき、読み込みが完了すると、窓のマークのアイコンが出てきます。
この窓のマークのアイコンが表示された直後に、ブルースクリーンが起こります。
再現性があることから、どうやら一過性の問題ではないようです。
この時点で、あぁ、こりゃスムーズにいかないパターンだ…、と認識。
しっかりとトラブルシューティングをすることに。
症状の確認
まずは詳細な症状を確認してみると、以下のようなことが分かりました。
- 先に紹介したブルースクリーンで表示されるエラーの内容は、メモリー関連のエラーや電力関連のエラー、カーネル関連のエラーなど毎回違う。
- ときどきブルースクリーンが出ずに、インストール先の選択画面まですすめることがある。
ただしインストール先を選択中などに突然黒画面になり、強制再起動する。 - POSTすらしないことがある。
ASUS製のマザーボードだったため、Q-Code LEDが搭載されており、その表示によってエラー内容を確認すると、CPUやメモリー、PCH関連で起動が止まっているようだが、エラー内容が不定である。 - POSTしない時は、DIAG_CPUやDIAG_DRAM、DIAG_VGAのLEDのどれかが点灯していることもあるが、点灯箇所は不定。
点灯してしないこともある。 - 4枚指しているメモリーのうち、一部または全部を認識しなくなる時がある。
ただし特定のスロットではなく、特定のメモリー個体でもない。
(スロットの位置を変えたり、スロットにさすメモリーを変えるも、問題がおこるスロット・メモリー個体に規則性がない。) - メモリーをすべて認識している時に、メモリーテストを行うとエラーは起こらない。
(メモリーを認識していない時は、そもそもテストができない。) - POSTしない場合に、ハードウェアの異常を知らせる警告音(ビープ音)は鳴動しない。
とまぁ、ぱっと思い出せるだけでも、問題の症状はこれくらいはあったんですが、つまるところまともに動いてないな…という印象でした。
そしてこれらの症状から、間違いなく何らかのパーツの不良か相性だろうと判断。
どのパーツが問題なのかの特定作業を開始しました。
基本的な確認 – 最小構成で試してみてもダメ
自作PCで問題が起こった際の基本的な確認内容に、最小構成で試してみる、というものがあります。
そこでせっかくケースにしまったマザーボードをはじめとした各種パーツをケースから取り出し、CPU、CPUクーラー、メモリー1枚、電源だけの状態でOSのインストールを試します。
ちなみにメモリーについては、マニュアル記載の推奨スロットに挿しています。
この状態では、OSのインストール先とする予定だったM.2 SSDも接続していません。
ですが今回の問題ではインストール先の選択画面まですすめないことがほとんどなので、問題切り分けのために外した状態で動作確認しています。
そしてこの状態で試してみても、問題は再現します。
電源は大丈夫そう
さらに電源を手持ちの予備の良品別個体に変えてみても、問題は再現します。
そのため電源が原因ではないだろうと推測。
次にメモリーの確認。
メモリーも大丈夫そうな気がする
今回問題が起きているPCに使用しているメモリーは、メーカーさんの動作確認済みリスト(QVL =Qualified Vendors List)に掲載されているメモリーであり、マザーボードとメモリー間での相性問題が起こるとは考えにくい状況です。
またすべてのスロットのメモリーを認識している時にメモリーテストを実行すると、まったく問題がないことから、メモリーの問題でもなさそうな気がします。
ただメモリーについては、良品別個体で試せていないので、断言はできなかったんですが。
怪しいのはマザーボードかCPU!?
電源は問題なし。
メモリーもおそらくは大丈夫!
となると残りは、マザーボードかCPU。
このどちらかの初期不良か、組み付け不良ということになります。
そこでありがちなCPUソケットのピン曲がりの確認と、CPUクーラーの組み付けミスを確認することに。
尚、問題となったPCに使用していたCPUは、Intel Core i7 6700K。
そしてCPUクーラーは、CRYORIG R1 UNIVERSALです。
Intel Core i7 6700KなどのSkylake世代のCPUでは、基盤の厚みが薄くなっており、サードパーティー製のCPUクーラーの組み付けにより、CPUの基盤が曲がる、またはマザーボードのCPUソケットが損傷する事例が報告されているのは知っていました。(Gigagine – IntelのCPU「Skylake」がサードパーティ製CPUクーラーで損傷する危険性)
常日頃からCPUをセットする際のソケットのピン曲がりには気をつけていましたが、SkylakeではそれだけではなくCPUクーラー設置の際にも、細心の注意を払って組み付けを行ったつもり。
そのためソケットのピン曲がりは起こっていないはずだ!
とは思いながらも、念のために確認したんです。
その結果マザーボード上のCPUソケットのピン曲がりはなく、CPU基板の反りも起きていませんでした。
いたって正常という感じ。
こうなると、マザーボードが対応している別の安いCPUを買ってきてマザーボードに搭載し、正常に動作すれば、CPUが原因。
またはCPUに対応している別のマザーボードを買ってきて、それにCPUを搭載して正常に動作すれば、マザーボードが原因。
という形で切り分けするほかないかなぁ、という状況でした。
そして切り分けが終わり次第、購入元のネットショップに返品・交換を申し出る、という流れですね。
どちらかの予備の良品別個体があれば買わずに済んだんですが、今回のケースでは、どちらも手元にありませんでした。
そのため最初は、マザーボードが対応している別の安いCPUを買おうと思っていたんです。
ところがふと、自宅から少し離れたPCショップで、有償の不調箇所特定サービスのようなものをやっていたことを思い出したんです。
そこで良い機会だし、一度どんなサービスか利用してみよう!と思ったわけ。
PCショップの不調箇所特定サービスを利用してみよう!
そこでさっそくそのPCショップに、車でPCのパーツ一式を持って訪問。
この時持ち運びが不便だったので、再度すべてのパーツをケースに組み付けてからお店に持ち込んでいます。
そして受付の方に事情を説明し、さらに自分でチェックした内容を箇条書きにしてまとめたメモ書きを渡し、問題の内容を説明。
さらにマザーボードかCPUが怪しいことも、口頭で伝えました。
すると店員さんはすぐに現象の確認を目の前で開始。
ブルースクリーンを見た店員さんは、ちょっと驚いた様子で、このパターンははじめて見ましたね。
おそらくはマザーボードの初期不良だとは思いますが、しばらくお預かりさせてください、とのこと。
冒頭にも書いたとおり、はるる自身、CPUの初期不良はめったに起こらないことだと思っていました。
そのため内心では、そうですよね、マザーボードですよね…、なんて思ってはいました。
そしてそれから数時間後、店員さんから電話で不調箇所の特定ができた旨、連絡をいただいたため、再度訪問して問題の内容を確認してみると。
店員さん&はるるの事前の予想とは裏腹に。
問題の原因はCPUの不良です!
これを聞いた時はビックリしましたね。
そして店員さんも同じように、CPUの不良だと分かった時は驚いたそうです。
なぜならこの店員さんにとっても、はじめて実物を見た不良のCPU個体だったらしく。
この事実からも、CPUの不良はとても珍しいことだ、ということがよく分かります。
原因の特定にいたった手法はシンプルで、はるるも行おうとしていた不良箇所の切り分け方法である、別個体の良品CPUを載せて行う動作チェックでした。
そしてその結果正常に動作したため、CPUの不良と判断した、というわけですね。
報告書の作成に応じてくれた!
さて、問題の原因がCPUの初期不良と分かったので、購入元のネットショップで返品処理を行わないといけません。
ただCPUの初期不良は、PCショップの店員さんですら滅多に見ないほどに珍しい現象です。
そのため購入元のネットショップにCPUの初期不良による返品・交換を申し出ても、言いがかりだと思われたら嫌だなぁ、なんて思ったわけ。
そこで調査にあたってくれた店員さんに、購入元での返品・交換作業をスムーズにするために、PCショップで調査した結果、CPUの不具合だったんですよ!
というような報告書のようなものを作ってくれませんか、とお願いしたところ、快く応じていただけました。
問題の報告書があれば、自信を持って購入元にCPUの初期不良だったんです!と主張できるわけなので、とても助かります。
返品作業はとってもスムーズに完了!
PCショップに預けていたパーツ一式と報告書を持って自宅に帰ってきたはるるは、さっそく購入元のネットショップに電話で返品・交換作業を申し出ました。
状況を一通り説明し、XXXというPCショップで診断をしてもらい、その報告書もあります。
必要ならそれも送付するので、返品・良品との交換作業をお願いできますか、と相談したところ、丁寧な謝罪とともにすぐに返品・返金に応じていただけました。
本当は良品交換で良かったんですが、このときはそのネットショップに同じ商品がなかったようで、返品・返金対応となりました。
またCPUの初期不良は珍しいことは承知しているので、報告書を返品の際に同梱しましょうか?
と先方の担当者さんに確認したのですが、それも不要とのこと。
以上がCPUの初期不良の発覚から返品までの一連の流れ。
CPUの初期不良は珍しいけれど、起こり得ます!
今回ご紹介した例のように、CPUの初期不良は珍しいですが起こり得る現象です。
そのためCPU以外のパーツはどうやら正常のようだ。
また先に挙げたCPU不調時の症状と似た現象が起きている!
という場合には、CPUの不良を疑ってみても良いかもしれません。
不良箇所の切り分けには、良品の別個体と交換して確認するのが簡単かつ確実です。
ただ良品の別個体を別途持っていないことも多いと思います。
そんな場合には、お近くのPCショップで動作チェックをしていただくと良いでしょう。
以上、CPUの不良かな?と思った際の参考にしていただければと思います。