グラフィックボードが発熱し、手でさわれないほど熱いのは故障なの?
2019/05/03
本エントリーの目次
先日、友人からこんな質問を受けたんです。
グラフィックボードがうるさいし、さわれないほど熱いけど、故障なのかな…?
この友人は自作PCを使っており、少し前にPCゲームを始めたいと思い、グラフィックボードを追加購入。
そしてさっそくPCゲームを始めてみると、PCの動作音がとてもうるさくなったそうです。
そこでPCケースのフタを開けて音の発生源を確認したところ、高速で回転しているグラボの冷却ファンが騒音の原因だと判明。
どうしてこんなに冷却ファンが高速回転しているんだろうと思い、ふとグラボの裏側(バックプレート)をさわってみたらとても熱く、手で長時間さわっていられないほどの熱さだった!
これは故障や不良品なんじゃないか…と不安に思ったようで、はるるに質問したというわけ。
結論から言いますと、こういったグラボがうるさい・さわれないほど熱いという現象は、多くの場合正常な動作であり製品の故障ではありません。
今回はこれらの点についての解説と、グラボはかなり熱くなるパーツなので要注意ですよ!
という内容についてご紹介していますので、グラボがうるさい・熱いけれど、大丈夫なんだろうか…と心配な方は、ぜひ参考になさってください!
グラフィックボード(GPU)は、PC内の大きな発熱源の一つ!
PCの内部には、動作時に熱を発生させるパーツが多数存在します。
その中でも代表的なのがCPUで、特に高負荷の演算時には、とてもたくさんの熱を発するのです。
CPUでは自身が発した熱による破損を防ぐため、過加熱状態とならないよう、CPUクーラーに対してCPUファンによる送風を行い、絶えず強制冷却を行っています。※
※発熱量が小さいCPUではファンによる強制冷却は行われず、小型のCPUクーラーによる自然冷却のみの場合もあります。
CPUは内部に半導体や金属部品を多数含んでおり、演算時にはCPUの内部に電気が流れます。
このとき、内部部品の電気的な抵抗(電気の流れにくさのこと)が原因で、熱が発生するのです。
そしてCPUと同じようにたくさんの熱を発生させることで有名なのが、GPUです。
GPUの温度は高負荷時に70~85℃、場合によってはそれを超える温度になります!
現在のPCでは、GPUは以下のいずれか、または複数箇所に搭載されています。
- マザーボードにGPUを搭載 ※1
- GPU内臓CPU(iGPU = integrated GPU)に搭載 ※1
- グラフィックボード(dGPU = discrete GPU)に搭載
※1 オンボードグラフィックと表現される場合もあります。
ゲームや製図(CAD)・イラスト作成、深層学習(Deep Learning)向けの高性能なGPUが必要なケースでは、低性能なオンボードグラフィックのGPUを使うことは稀です。
これらの用途にGPUの計算能力が必要な場合には、別途グラフィックボード製品を購入し、それに搭載されたGPUを使用します。
そして、特にグラフィックボードに搭載されている高性能なGPUは、演算時にとてもたくさんの熱を放出します。
高性能なGPUが発する熱量は本当に凄まじく、高負荷時のGPUの温度は70~85℃。
場合によっては、それを超える温度となってしまうこともあります。
GPUが発した熱は、グラフィックボードのボディー部(基盤や背面のバックプレート、PCケース背面に固定するブラケット部)に伝わり、ボディー部もさわれないほどの高温となってしまうのです。
こういった事情から、グラフィックボードがさわれないほどの高温となってしまうのは、多くの場合では正常な動作の結果と言って良いでしょう。
ただしグラフィックボード製品の故障により、GPUの強制冷却用のファンが停止。
その結果、異常な高熱状態となってしまう可能性はゼロではありません。
したがって、GPUの温度を計測するツール類※2で確認するとGPUの温度が高いにも関わらず、ファンが停止している場合には、グラフィックボード製品の故障の疑いがあります。※3
※2 グラフィックボードメーカーが専用のソフトウェアなどを公開しているケースが多いです。
※3 MSI社のZero Frozr機能など、一定温度まではファンが一切回らない製品もあり、こういった機能の動作中にファンが回転しないのは故障ではありません。
グラフィックボードがうるさいのは、冷却ファンの風切り音が原因
冒頭に紹介した友人のPCでは、グラフィックボードを追加してゲームを始めたら、PCの動作音がとてもうるさくなり、騒音の発生源はグラボの冷却ファンだった。
ということでしたが、これもグラボがさわれないほど熱くなるのと同様に、多くの場合では正常な動作の結果となります。
繰り返しとなりますが、グラフィックボード(GPU)はゲームをプレイ中など、高い負荷がかかっている状況ではとてもたくさんの熱を発します。
そして自身が発した熱により破損しないよう、冷却ファンでの送風による強制冷却を実施。
このときファンの風切り音が発生し、うるさいと感じるのです。
CPUの冷却ファンより、グラボの冷却ファンの方がうるさいことがある
PCの側板を開けて冷却ファンの音を聞いていると、『CPUの冷却ファンよりも、グラボの冷却ファンの方がうるさい気がする…』という方もいらっしゃるでしょう。
たしかに、グラボの冷却ファンの動作音の方がCPUファンの動作音より大きく、うるさいと感じることがあります。
同程度の冷却効果を得るとき、一般的には大きなファン(直径が大きいファン)を低回転でゆっくり回す方が、小さいファンを高速で回転させるよりも騒音が小さくなります。
自作PC向けのCPUクーラーに搭載されている冷却ファンは、直径12cmの製品が採用されていることが多く、低回転でも一定の風量・冷却性能を確保できます。
対してグラフィックボード(GPU)では、グラボの製品サイズの都合上、もう少し小さめのファンを搭載している製品が多いです。
そこで冷却効果を高めるために高速で回転させたり、複数(2~3個)の冷却ファンを同時に動作させる仕組みとなっています。
こういった事情から、CPUの冷却ファンよりグラボの冷却ファンの方がうるさいと感じることがあるのです。
また、稀にグラフィックボードの冷却ファンの軸ブレ故障により、大きな騒音が発生する場合もあります。
このケースでは、突然それまでとは異なるガガガガーーーッ!という明らかな異音、そしてかなり大きな音が発生するため、異変(故障)であると気付けるでしょう。
グラフィックボード(GPU)をしっかりと冷却できないと、性能に制限がかかります!
現在のグラフィックボード製品では、発熱に対して冷却が追いつかず、あらかじめ決められた温度を超えると、性能(GPUのクロック周波数)に制限をかけて、発熱を抑えるような動作をします。
これはサーマルスロットリングと呼ばれるもので、PCゲームをプレイ中に突然フレームレート※がガクっと下がるなど、体感できる場合があります。
したがって冷却ファンの送風による強制冷却は、製品の破損を防ぐためだけではなく、高い性能を維持するためにも必要なものなのです。
※フレームレートについての詳細は、30fpsと60fpsの違いや差は比較動画を見ても分からなかったけど実体験で納得!を参照ください。
グラフィックボードの周辺も熱くなるので、要注意!
ここまでに解説してきたとおり、グラボがうるさい・さわれないほど熱いという現象は、多くの場合正常な動作の結果であり製品の故障ではありません。
そしてあまり知られてはいませんが、特に高性能なグラボの発する熱は非常に多く、本当にグラボ本体がさわれないほどに熱くなります。
最近のグラボ製品では、自重により基盤が反ってしまったり、破損するのを防ぐために背面に金属製の補強用パーツ(バックプレート)が搭載されています。
グラボ本体の背面にあるこのバックプレート部は、一部の製品では冷却機構の一部としても使われており※、金属ボードの表面が熱くて長時間さわっていられないほどの温度となるのです。
そのため、グラボのバックプレート部が高温となるタイプの製品では、バックプレートに物を置くのは要注意。
ネット上ではフィギュアをグラボのバックプレート部に置いているのを見かけますが、耐熱温度が低い物を長時間、高温のバックプレート部に置くのは危険です。
※サーマルパッドと呼ばれるパット状の熱伝導体を使い、基盤背面の熱をバックプレートに伝達。そしてバックプレートにケースファンの風が当たることで放熱しています。
またグラフィックボードの本体だけではなく、その周辺部にも熱が伝達し、かなりの熱さとなります。
通常、グラフィックボード製品はマザーボードのPCI Express スロットに接続し、以下のようにケース背面のリアスロット部で固定します。(以下PCでは2WAY-SLI構成のため、グラボが2枚接続されています。)
この固定部や、下記赤い四角で示した周辺部(PCケース背面の板の部分)にも熱が伝わり熱くなることがあるので、ご注意ください。
高性能で静かなグラフィックボード製品はないの?
高性能なGPUを搭載した製品ほど発熱量が多いため、ファンによる強制冷却は欠かせません。
そのため、高負荷動作時のファンの風切り音をなくすのは難しいのが現状です。
ただしグラフィックボードはメーカー・製品によって、特に冷却・静音性能に大きな差があり、処理性能に加えて冷却性能と静音性能が高いレベルで両立されている製品も存在します。
たとえば、はるるが現在使用しているMSIさんのGeForce RTX 2080 Ti GAMING X TRIOもその一つです。
この製品では、高負荷時でも安定した冷却によりサーマルスロットリングが発生せず、動作音もあまり大きくありません。
さらにZero Frozr機能により、60℃まではファンが回らないため、風切り音が一切発生しません。
本製品以外にも、高い冷却・静音・処理性能を持っているという評判の製品はいくつかあります。
高性能で静かなグラフィックボード製品をお探しの方は、そういった評判の良い製品の購入を検討してみてはどうでしょうか。
ちなみに、PCの動作音が気になってゲームやPC業務に集中できないという場合には、別室にPC本体を置く、という方法もおすすめです。
これについては、別途PCの静音の究極系かも!うるさいPCを隣の部屋に置いて静音化する方法でくわしく書いているので、興味がある方は併せて参考になさってくださーい!