~以前と~以外の『以』は、~を含むの?含まないの?
2018/04/22
本エントリーの目次
少し前に、このブログのとあるエントリーを書いている時のこと。
これまで慣れ親しんできた、とある漢字の意味がふと気になったのです。
その文字がこちら。
たとえば、西暦2000年以前には存在しなかった技術だ!とか、1,000円以上購入すると、駐車場代が1時間無料だ!とか、もう彼以外を愛せないわ、と言った文章に使う、『以』という漢字。
そこで今回は、この『以』という漢字について語ります。
『以』の意味をどのように認識していますか?
この『以』という漢字、先に挙げた例のように、日常的によく使う漢字・言葉です。
そこでちょっと質問なんですが、『以』という漢字の意味をどのように認識していますか?
たとえば先の西暦2000年以前という場合、西暦2000年10月23日は含まれるでしょうか。
それとも含まれないでしょうか。
1,000円以上といった場合、1,000円ピッタリは含まれるでしょうか。
それとも含まれないでしょうか。
彼以外といった場合、彼は含まれるでしょうか。
それとも含まれないでしょうか。
このあたりが、はるるが気になった点です。
『以』は含むよね?
はるるの考えでは、『以』はその前の言葉を含むという認識でした。
つまり西暦2000年以前という場合、西暦2000年10月23日は含まれる、1,000円以上といった場合、1,000円ピッタリは含まれる、ということです。
その根拠は、小学校か中学校で習った算数・数学の授業によるもの。
以下・以上の意味
はるるは算数や数学の授業で、以下、以上ともにその前の言葉(数)を含む、と習いました。
具体的には500以下といった場合、500そのものと500より小さい数を合わせた数の集合と認識しています。
それはたとえば、-300、0、1、451、499、499.99999、500といった数。
これとは逆に500以上では、500そのものと500より大きい数を合わせた数の集合と認識しています。
こちらはたとえば、500、500.0000001、501、1000、9999999999といった数。
そして、500以下の数字から500を除いた数の集合は500未満、500以上の数字から500を除いた数の集合は500を超える、500より大きい、500を超過というように表現します。
たとえば条件に合致するある数をX、条件をYとした場合、Y以下、Y以上、Y未満、Yを越えるについては、以下の式を見ると分かりやすいのではないかと。
Y以下:X<=Y
Y以上:Y<=X
Y未満:X<Y
Yを越える:Y<X
この算数・数学での教えを背景に、『以』はその前の言葉を含むという認識だったわけです。
ところが先にもうひとつ例を出しましたね。
これについて考えてみると、いささかおかしなことに…。
というのも。
もう彼以外を愛せないわに彼を含むと!???
この、もう彼以外を愛せないわ、というフレーズに彼を含めて考えてみましょう。
彼以外 = 彼 + 彼を除くその他全員 = すべての人、ということになりますよね…。
つまりこの発言をした方(おそらくは女性)はすべての人を愛せない!
という大きなトラウマのようなものを背負ってしまったんでしょうか。
…違いますよね。
もう彼以外を愛せないわ、といった場合、この彼が素晴らしく良い感じで、もうこの人(彼)を越えるような素晴らしい人は、他にいないわ!
大好きよ!愛してる!というような意味で使われることがほとんど。
いえ100%でしょう。
だから、一概に『以』はその前の言葉を含むとは言えないことになります。
こうなると、先の例の1,000円以上というのは、数学的な理由から『以』はその前の言葉を含む、として良いとしても。
時間を表す、西暦2000年以前という言葉の場合、『以』はその前の言葉を含む、として良いのか怪しくなってきましたね。
そこでこの辺についてもう少し調べてみると、しっかりとした回答がありました!
法律用語としては、『以』はその前の言葉を含むという意味で使う!
これについてはWikipediaに記載がありましたので、該当の箇所を引用します。
まずは以上、以下について。
以上(いじょう)とは、ある基準と同じ、もしくはその基準より上であること、以下(いか、中世末期まではいげ)はある基準と同じ、もしくはその基準よりも下のことである。
中略
法律用語においても基準点となる数量を含まない場合には数学と同様に以上の代わりに「超える」、以下の代わりに「未満」を用いるが、「超える」の場合はまれに「超過(ちょうか)する」と表現することもある。
(Wikipedia – 以上・以下より引用)
次に以前・以後についてはこちら。
以前
法律用語において以前とは、一定日時より起算したその前の時間的間隔や時間の連続を表す用語である。
起算点となった日時を包括するという意があり、起算点を含まない場合は「前」を使う(以後のように、以前と前が混同することはない)。
以後
法律用語において以後とは、一定日時から起算したそれより後の時間的間隔や時間の連続を表す用語である。
起算点を含むという意があり、起算点を含まない場合は「後」を用いる。 但し「この法律の施行後」など稀に以後と後が同義的に用いられる場合がある。 また、以降も同義的に用いられるが、こちらはある時点以後定期的に制度として行われる物に用い、予算や恩給、選挙などに用いる。(Wikipedia – 以前より引用)
というわけで法律用語的には、数量・時間共に『以』はその前の言葉を含む、という意味としてとらえてOK!
だから、冒頭の西暦2000年以前という場合、西暦2000年10月23日は含まれるか、という問いについては含まれる、が正しいわけ。
以外の『以』もその前の言葉を含むという意味で合っているらしい!
問題はこの以外の方の『以』。
『以』はその前の言葉を含む、という意味で解釈すると、どうにも具合が良くない、と言うのは先に書いたとおりです。
ところがこれについてもいろいろ調べてみたところ、『以』はその前の言葉を含む、という意味で解釈して良いみたい。
これはどういうことかというと。
『以』という漢字には~より、~をもってという意味があり、彼以外といった場合、彼を含む範囲より外。
あるいは、彼をもって外(ほか)とする = 彼を含む境界の内側の外側。
つまり、ある範囲の外側を以外というのです。
だから今回の例ではある範囲 = 彼だけなので、彼以外 = 彼を除くすべての人、という意味が成り立つわけ。
以内の場合は?
以内の場合も以外と同様です。
つまり、ある範囲の内側を以内というのです。
たとえば今日から3日以内ということであれば、それは今日から0日後(今日)、1日後、2日後、3日後のどれかのうちに、ということです。
ややこしいので以外だけ成句のように覚えてしまうといいのかも!
以外だけは考え方が難しく、一見『以』はその前の言葉を含んでいないように感じられます。
そのため以外だけは成句(慣用句)のようにとらえ、○以外 = ○を含まない!
こう覚えてしまった方が、混乱せずに済むかもしれませんね。
『以』の使い方には気をつけて!
今回の調査を行うよりも前のはるるは、数字については、『以』はその前の言葉を含む、というしっかりとした自信がありました。
ですが時間軸については、含むのか含まないのか、明確に分かっていませんでした。
それが今回の調査の結果、しっかりと含む!
ということが分かったわけですが、これらを誰しもがしっかりと理解しているとは限りません。
また法律用語としてではない場合、時間については以前は含むが、以後は含まない、という考え方もあるようです。
つまり2000年以前 = 2000年12月31日を含むそれよりも前のすべての期間、2000年以後 = 2001年1月1日を含むそれよりも後のすべての期間という考え方。
こういった考え方、認識の違いで意図が正確に伝わらない可能性もゼロではありません。
そのため『以』の使い方には気をつけておいた方が良いなぁ、なんて思いました。
必要なら、この日は含むからね!などと口頭で確認したり、注釈を入れておくなどで認識のズレが起きないように配慮すると、より良いかもしれませんね!