一般向けWindowsはサーバー機能を提供してはダメ?ファイル共有はNG?
2018/04/22
本エントリーの目次
先日仕事中に後輩くんからこんな質問が。
Windows Serverでないとダメですか?
やりたいことがいまいちまとまっておらず、最初は何をしたいのかよく分からなかったんですが、要件をまとめるとこんなことらしい。
- 社内に新しい閉鎖ネットワークを構築したい。
- その閉鎖ネットワークには、サーバー機能を提供するPCを用意し、Windowsのファイル共有機能を利用して、ファイルサーバーサービスを提供、クライアントPCに利用させたい。
- サーバー機能を提供するPCでは、プリンター共有の機能を利用し、プリンターを公開、プリンターサーバーとしてのサービスも提供させる。
そして冒頭の質問となるわけなんですが、要はサーバー機能を提供させることになるので、Windows 7やWindows 8.1、Windows 10などの一般向けのWindowsではダメで、Windows Serverが必要ですよね?
ということを聞きたかったみたい。
これ、簡単そうな質問に感じますが、実は難しい質問なんです。
具体的に言うと、これに対して正しい判断をするには、マイクロソフトさん(Windowsの開発元)のライセンスについて、ある程度理解している必要があるんです。
そこで今回はこの辺について、少しご説明しようかと。
はじめに
本エントリーの内容は、2015年11月現在のマイクロソフトさんのライセンス条項や製品条項を元に記載しています。
そのため今後、ライセンス条項や製品条項の変更が起こる可能性がありますこと、あらかじめご了承ください。
そもそもWindows Serverって何ですか?
IT関連のお仕事をされていない方であれば、よほどPCが好きだ!という方を除いては、WindowsといえばWindows XP やWindows Vista、Windows 7、Windows 8.1、Windows 10などの一般向けのWindowsを想像される方がほとんどでしょう。
そして一般的にはあまり知られていませんが、Windowsにはこれら一般向けの製品ではなく、サービスを提供する機能を持ったサーバーという用途向けのWindows、というものも存在するんです。
このサーバー向けのWindowsにも歴史があり、Windows Server 2003、Windows Server 2003 R2、Windows Server 2008、Windows Server 2008 R2、Windows Server 2012、Windows Server 2012 R2といったように、バージョンアップを繰り返しています。(R2は、R2なしの製品の後継バージョンです。)
尚、2015年11月現在の最新バージョンは、Windows Server 2012 R2となっています。
Windows Serverはとっても高い!
ちなみにこのWindows Server、結構お高いんです。
マイクロソフトさんの参考価格によると、最も高額なDatacenterエディションでは、1ライセンス119万円。
業務用途で使う場合、ユーザー数の制限関係から、おそらくは最低ラインとなるであろう、Standardエディションでも17万円ですから。
実際には代理店経由で購入することになり、もう少し安く調達できますが、それでも高いことには変わりません。
しかも…。
CAL(Client Access License)が別途必要です!
Standard以上のエディションのWindows Serverを使ってファイルサーバーを構築、それによるファイルサーバーサービスをクライアントに提供する場合、高額なサーバーライセンス(先に書いた119万とか、17万のライセンス)とは別に、追加でCAL(Client Access License)と呼ばれるライセンスが、Windows Serverにアクセスするデバイス数(デバイスCAL)、またはユーザー数(ユーザーCAL)分必要となります。
CALはキャル、またはカルと呼ばれており、1ライセンスあたり、定価がたしか6,000円前後だったと思います。(2015年11月現在時点の公式の参考価格が見つからず…。)
ただ、これも代理店を経由すれば、もう少し安くなります。
また100ライセンス単位で購入すれば、かなり単価が下がります。
いずれにせよ、Standard以上のエディションのWindows Serverを使ってファイルサーバーを構築・利用する場合、結構なライセンスの費用が必要となります。
そのため、可能であればWindows Serverを使わない方が安く要件を実現できるわけで。
そこで後輩くんは、先にご紹介した要件を満たすには、サーバー機能を提供するPCについてはWindows Server 2012 R2を使わないとダメか?
とはるるに相談してきたんでしょう。
条件付きで一般向けWindowsによる利用が可能!
結論から言うと、条件付きではありますが、今回の要件を満たしたサーバー機能を提供するPCに、Windows Serverは不要です。
だってそれがダメだったら、一般的にネット上で情報が公開されている、Windows 7やWindows 10に搭載されたファイル共有やプリンター共有機能を使って、当該PCに他のデバイスからアクセスさせちゃいけませんよー!ということになってしまうわけです。
そのためWindowsのライセンス許諾でも、明確に認められています。
そして実ははるるは以前に、一般向けWindows(Windows 7やWindows 10)がファイル共有やプリンター共有サービスをクライアントPCに提供する場合に、なぜWindows ServerやCALが不要なのか、というライセンス上の疑問を持っていたんです。
そこでマイクロソフトさんのVLSC(マイクロソフト ボリューム ライセンス – サービス センター)やカスタマーインフォメーションセンターに実際に問い合わせを行い、その理由をしっかりと確認し、その根拠を知った、というわけ。
基本的には一般向けWindowsにサーバー機能を提供させてはいけません!
まず大前提なんですが、基本的には一般向けWindowsにサーバー機能を提供させてはいけません!
これについては、マイクロソフトさんのボリュームライセンス製品の許諾についてまとめてある、製品条項では根拠となる記述を見つけることができませんでした。
ですがVLSCやカスタマーインフォメーションセンターに今回の要件に関連・類似する事例の問い合わせを行うと、毎回一般向けWindowsにサーバー機能を提供させるのはダメです!
というようなお話をされるので、基本的にはそういうことなんだろうと思います。
つまり基本的には、一般向けWindowsにファイル共有やプリンター共有、IIS(Internet Information Services)といったサーバー機能を構築、それをクライアントに公開してはいけませんよ!という大前提があるんです。
まぁたしかにそうしないと、何のためにWindows Serverを買うのか、分からなくなってしまいますよね。
ですがこの話を聞くと、きっとビックリされる方が多いんじゃないでしょうか。
え!?私は自宅で家族の5台のPCで1台のプリンターを共用するために、私のPCに接続したプリンターを共有しているけれど、それがダメってことなの?とかね。
たしかに先の大前提だけを考えると、これは完全にアウトです。
ただこの大前提には特例がありまして、その特例により、先の後輩くんのケースや家族で5台のPCにプリンターを共有しているケースは、ライセンス違反にはなりません。
一般向けWindowsは一部特例においてのみ、サーバー機能の提供が許可されています!
まずは2015年11月現在の一般向けWindowsとして普及しているWindows 7、Windows 8、Windows 10のホームエディション相当のOEM版について、そのライセンス条項の一部をご覧ください。(※OEM版 = コンピューター製造業者から取得したコンピューターにプレインストール済みのWindowsのこと。)
Windows 7 HomePremiumのライセンス条項
デバイスによる接続
お客様は、ファイル サービス、プリント サービス、インターネットの情報サービス、インターネット接続共有サービスおよびテレフォニー サービスのみを利用するために、ライセンスを取得したコンピューターにインストールされた本ソフトウェアに対し、最大 20 台の他のデバイスからの接続を許可することができます。
WINDOWS 8のライセンス条項
デバイスの接続。
お客様は、ライセンスを取得したコンピューターでファイル サービス、印刷サービス、インターネット インフォメーション サービス、インターネット接続の共有およびテレフォニー サービスを利用することを目的として、ライセンスを取得したコンピューターにインストールされた本ソフトウェアに対し、最大 20 台の他のデバイスからの接続を許可することができます。
Windows 10のライセンス条項
デバイスの接続。
お客様は、ライセンスを取得したデバイスでファイルサービス、印刷サービス、インターネットインフォメーションサービス、インターネット接続の共有およびテレフォニーサービスを利用することを目的として、ライセンスを取得したデバイスにインストールされた本ソフトウェアに対し、最大 20 台の他のデバイスからの接続を許可することができます。
どれも同じようなことを書いている条文ですが、簡単に言うと、ファイル共有やプリンター共有、IISなどの利用を目的として、一般向けのWindowsに対して最大20台の自身を除く他のデバイスからの接続を許可しますよ、ということ。
この特例により、本来はサーバー機能の提供が禁止されている一般向けWindowsであっても、ファイル共有やプリンター共有などの特定用途に限り、そして最大20台までの他のPCから接続に限って許可されるわけ。
だから、冒頭の後輩くんの要件については、20台までのクライアントからのアクセスであれば、問題なし!
そして自宅で家族の5台のPCで1台のプリンターを共用している例も、20台を超えていないので、問題なし!
というわけなんです。
ちなみに特定用途に該当しない使い方としては、たとえばどんなものを想定していますか?
とカスタマーインフォメーションセンターのオペレーターの方に確認したところ、たとえばデータベースサーバーなどがそれにあたるとのことでした。
他のエディション、パッケージはどうなの?
先にご紹介した条項は、Windows 7、Windows 8、Windows 10のホームエディション相当のOEM版のもの。
そのためプロフェッショナル相当のエディション、パッケージ版のものはそれぞれライセンス条項が異なります。
これらについても念のために確認したところ、当該部の条項については、以下のように記載されていました。
OEM版Windows 7 Professionalについて
OEM版Windows 7 Home Premiumと同様。
そのためファイル共有やプリンター共有、IISなどの利用を目的とした最大20台までのアクセスは問題なし。
OEM版Windows 8 Proについて
OEM版Windows 8と同様。
そのためファイル共有やプリンター共有、IISなどの利用を目的とした最大20台までのアクセスは問題なし。
パッケージ版Windows 7 Home Premiumについて
OEM版Windows 7 Home Premiumとほぼ同様。(違うのは接続詞が1箇所だけ。)
そのためファイル共有やプリンター共有、IISなどの利用を目的とした最大20台までのアクセスは問題なし。
パッケージ版Windows 7 Professionalについて
OEM版Windows 7 Home Premiumとほぼ同様。(違うのは接続詞が1箇所だけ。)
そのためファイル共有やプリンター共有、IISなどの利用を目的とした最大20台までのアクセスは問題なし。
パッケージ版Windows 10について
OEM版Windows 10と同様。
そのためファイル共有やプリンター共有、IISなどの利用を目的とした最大20台までのアクセスは問題なし。
というわけで、以上のような一般向けWindowsであれば、ファイル共有やプリンター共有、IISなどの利用を目的とした、最大20台までの他のデバイスからのアクセスは、ライセンス違反にはなりません!
その他のバージョン・エディションについては?
上記に挙げた例にはない、Windowsのバージョン・エディションのライセンス条項を確認したい場合は、Microsoft ライセンス条項のページにアクセスし、実際にライセンス条項を確認されると良いでしょう。
ソフトウェアの取得方法や製品名、バージョンなどを選択していくと、目的の製品のライセンス条項が確認可能です。
またボリュームライセンスについては、こちらには記載がないため、製品条項で確認されると良いかと。
条項を見てもよく分からん!という場合には、マイクロソフトさんのVLSC(マイクロソフト ボリューム ライセンス – サービス センター)やカスタマーインフォメーションセンターに問い合わせをすれば、かなり丁寧に教えてくれるので、そちらを利用されるのも手です。
特定用途を除いたサーバー機能の提供は、ライセンス違反です!
ここまでご紹介したように、基本的には一般向けWindowsにサーバー機能を提供させてはいけません。
そのためライセンス条項で許可された特定用途(ファイル共有やプリンター共有、IISなどの利用を目的とした)や台数制限の使用範囲を超えてしまいそうな場合には、Windows Serverの使用を検討されると良いでしょう。