ヤマハルーターの設定解説本はヤマハルーター実践ガイドがおすすめ!
2021/03/12
本エントリーの目次
数か月ほど前に、勤務先の後輩からこんな相談が。
ネットワークやヤマハルーターの設定に関する解説本のおすすめはないですか?
この後輩くんには入社してから現在まで、各種プログラミング業務やテスト業務をお願いしていました。
そのためこれまでは、サーバーやネットワーク関連についての業務はまったくの未経験。
ところが最近サーバーやネットワーク関連の技術に興味が出てきたようで、独学で勉強したいと思ったようです。
サーバーとネットワーク関連の技術・知識は密接に関連するものの、かなり別の分野であり、サーバー構築時にはネットワークについての知識がある程度必要となります。(DNSサーバー、webサーバー構築時など)
そこでまずは、ネットワークについて勉強した方がいいんじゃないか、とアドバイス。
すると冒頭のように、ネットワークやヤマハルーターの設定に関する解説本のおすすめはないですか?と相談されたわけ。
実ははるるたちの勤務先のネットワーク機材の一部にヤマハさんのルーターを使用しており、はるるが設定しているのを何度か見かけて、ヤマハさんのルーターに興味を持ったみたい。
ヤマハって楽器とかバイクのメーカーなのに、ネットワーク機材も作っていたの!※
という疑問から、ヤマハのルーターについてネットで調べてみたところ、その性能や評判の高さにビックリしたようです。
※厳密には、ネットワーク機材を作っているヤマハさんとバイクのヤマハさんは別の会社です。
その場では後輩くんに、今度勉強におすすめな本を探しておくよ~!
なんて答えたわけ。
そしていざ探してみると、なかなかないんですよ…。
ヤマハルーターの設定に関する解説本。
まったくゼロというわけではないんですが、最低限のネットワークの知識があることを前提とした内容のものばかりのようで。
本来であればネットワークに関する本を数冊読んでもらってから、そういった本を読んでもらえばいいのでしょう。
ですが今回のケースでは、ネットワークについて少し勉強したら、すぐにルーター実機を設定できるような内容になっている本が良いかなぁ、と思ったんです。
だって勉強ばかりだと、実際に設定の勉強(実践)をする前に飽きちゃうじゃないですか。
だから勉強・実践、勉強・実践みたいな感じで読んでいけそうな本が良いかなぁと考えたわけ。
そこでそういった本を探していたところ、タイトルがそのものズバリな本をAmazonさんで発見。
さっそく購入して読んでみたところ、これがまさに勉強・実践、勉強・実践という流れになっている本だったのです!
これが良さそうだ!ということで、後輩くんにおすすめしたところ、とても分かりやすかったです!と高評価。
ネットワークやヤマハルーターの設定に関する解説本は、技術評論社のヤマハルーター実践ガイドがおすすめ!
というわけでこちら、はるるが実際に購入して後輩くんにおすすめしたネットワークや、ヤマハルーターの設定に関する解説本、ネットワークエンジニアのためのヤマハルーター実践ガイド。
大型本のため重く、紙の本は持ち歩きには適さないため、Kindle版などの電子書籍版の方の購入がおすすめです。
はるるがこのネットワークエンジニアのためのヤマハルーター実践ガイドを読んで素晴らしいなぁ、と感じたのは以下の点について。
全462ページにわたる圧倒的なボリュームでくわしく解説!
ヤマハルーター実践ガイドは、はるるが実際に購入して手元にある初版 第一刷では、巻末の索引部を除いた内容部が462ページもあり、かなりのボリュームです。
これはネットワークやネットワーク機材に関する解説本としては、かなり多い部類の本になると思います。
2017年6月現在税込み4,190円とやや高価ですが、これだけのボリュームがあれば、十分納得できる価格設定だと感じています。
内容は大きくは以下の12のチャプターに分かれて展開されており、前から読み進めていくことで、ネットワークに関する知識を身につけながら、ヤマハルーターの操作・設定方法を実践しつつ覚えていける内容となっています。
- IPネットワークの概要
- ヤマハルーターの基礎知識
- インタフェースとスイッチ機能
- IPルーティング
- ルーティングプロトコル – RIP
- ルーティングプロトコル – OSPF
- ルーティングプロトコル – BGP
- NAT
- セキュリティ
- VPN
- QoS
- 冗長化と負荷分散
ちなみにはるるの手元にある初版 第一刷では、誤記と思われる内容が少しあったのがやや気になりましたが、今後の改版できっと修正されることでしょう。
初心者の方はチャプター4 IPルーティングの途中から、チャプター7 ルーティングプロトコル – BGPまでは読み飛ばしても大丈夫かも
この本の12のチャプターのうち4チャプター、実に1/3の内容はIPルーティングやルーティングプロトコルに関する内容です。
ルーターは『IPパケットのルーティングを主に行うネットワーク機材』ですから、これは当然のこと。
ただ初心者の方や、小規模なネットワークの構築を行う際の参考にすべくこの本を購入しようと考えている方は、これらについては読み飛ばしても大丈夫だと思います。
具体的にはチャプター4 IPルーティングの途中、ルーティングプロトコルからチャプター7 ルーティングプロトコル – BGPまでの部分がこれに該当します。
この部分に書いてある内容は、ダイナミックルーティング(動的に追加される経路)に関する内容であり、初心者の方や小規模なネットワークの構築時には知らなくてもあまり問題にならない内容だからです。
またダイナミックルーティングに関する設定の実践には、高価なルーター機材が複数台必要であり、簡単には検証環境を用意できないことも理由の一つです。
ネットワーク規模が中・大規模の場合は、ルーティングプロトコルを利用したダイナミックルーティング(動的に追加される経路)を利用しないと、設定の手間がかかる・設定漏れによる問題が起こることから、ダイナミックルーティングに関する知識は必須です。
しかし小規模なネットワークの場合では、スタティックルーティング(あらかじめ手動で追加しておく静的な経路)だけで問題なく運用可能なため、ひとまずルーティングプロトコルに関する内容は読み飛ばしてその後のNATやセキュリティーに関する内容を勉強するのがおすすめです。
チャプター1のIPネットワークの概要を読めば、現在主に使われているネットワークに関する内容はある程度理解できる!
ヤマハルーター実践ガイドのチャプター1では、現在主に使われているネットワークの仕組みであるIPネットワークに関して、基本的な仕組みや代表的なプロトコルについて解説しています。
これはたとえばIPアドレスやサブネットマスク、ポート番号、IPパケットのフォーマット、ARP・ICMP・TCP・UDP、HTTP・SNMP・DHCP・DNS・TELNET・SSHといった各種プロトコルについて。
そのためネットワークに関する知識がほとんどない状態でこの本を読み始めても、まったく問題ないと思います。
もちろん事前にある程度の知識があった方が理解が容易になる箇所もありますが、必須ではありません。
だからはるるの後輩くんのように、これまでプログラミング業務しか行っておらず、サーバーやネットワーク関連についての知識がほとんどない状態の技術者の方にもおすすめできる一冊と言えるのです!
ちなみにチャプター1の内容のイメージは、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)さんが実施している基本情報技術者試験(FE)の合格対策用の参考書に書いてあるような感じです。
したがって、すでに基本情報技術者試験の勉強をしている方であれば、読み飛ばしても良い内容かもしれません。
豊富な図と設定例が掲載されているので、理解が容易!
本書では全編を通してたくさんの図や設定例が掲載されているので、理解しやすい点も素晴らしいです。
ネットワークはその構造や接続形態の全体像を把握するためには、ネットワーク構成図があるととっても便利。
この点について本書では、必ず先に簡易的なネットワーク構成図を提示し、その設定方法(設定用コマンド)を提示・説明する流れとなっているので、とっても分かりやすいです!
また設定用コマンドについては、以下のようにコマンドそれぞれの解説が書かれており、各コマンドの意味が分かりやすいのも良いですね!
1 | login password ① |
① ログインパスワードを設定する。
ヤマハルーターのルーティングプロトコル(RIP、OSPF、BGP)の設定については、ネット上にあまりサンプルがないので参考になる!
先ほど初心者の方や、小規模なネットワークの構築を行う方は読み飛ばしてもOKと書いたルーティングプロトコル(RIP、OSPF、BGP)についてですが、ヤマハのルーターでの設定サンプルやネットで公開されている構築事例に関する情報はあまり多くはない印象です。
もちろんこれらのルーティングプロトコルに関する知識があれば、RTX系のルーターのコマンドリファレンスを見ながら設定を行うことが可能です。
ただやはりサンプルがあった方が分かりやすいので、初めてこれらの設定を行う際は、本書のサンプルがかなり役に立つことでしょう。
またルーティングプロトコル(RIP、OSPF、BGP)については、設定の説明の前にかなりくわしいプロトコルに関する解説があります。
そのためルーティングプロトコルに関する知識がない方でも、ちゃんと設定できるレベルまで理解ができるはずです。
ちなみに本書の巻末の索引部を除いた内容部462ページのうち、147ページから332ページまでの176ページ、本書の約38%がルーティングプロトコルに関する内容であることから、いかにしっかりと解説されているか、よく分かると思います。
ルーティングプロトコルについて設定する際は、コマンドのパラメーターとすべき内容を判断・決定するのに、ルーティングプロトコルに関する知識が必須となるため、しっかりと勉強してから設定すると良いと思います。
Ciscoルーターのコマンドの併記も便利!
ネットワーク機材の有名なメーカーさんの一つに、シスコシステムズ(Cisco Systems, Inc)さんが挙げられます。
これらの機材の設定を業務で行っている場合、Cisco IOS(Cisco Internetwork Operating System = Cisco社のルーター・スイッチ類のOS)の操作・設定用コマンドはよく知っているはずです。
そして業務の一環でヤマハさんのルーターの設定が必要となることもあるでしょう。
そんなときにも本書はとても役に立ちます。
と言いますのもヤマハルーター実践ガイドでは、以下のようにヤマハルーターの操作・設定用コマンドと同じ意味を持つIOSコマンドが併記されているからです。
1 | administrator password ① |
① 管理パスワードを設定する。 (IOS) enable pass
そのためこれまでCiscoさんの機材を設定してきたネットワークエンジニアの方が本書を読めば、サクサクとヤマハルーターの設定をマスターできることでしょう。
Ciscoルーターにできてヤマハルーターでは設定できない機能の対照表があるのも助かる!
同じメーカーの製品でもグレードが異なると設定・利用できない機能がありますが、メーカーが異なる場合にはさらに利用できる機能の差が多いです。
この点について本書では、Ciscoルーターにできてヤマハルーターでは設定できない機能の対照表が掲載されているなど、分かりやすくまとめられています。
たとえばOSPFの完全スタブエリア・NSSAエリア・完全NSSAエリアについて、Ciscoルーターであれば対応しているが、ヤマハルーターでは今のところ非対応であるなどが、表でまとめられています。
GUIの操作に関してはほとんど書かれていません!
ヤマハルーターでは一部の操作について、RTX1210などGUI(webGUI)操作で設定可能な機種もあります。
そのためCUIの操作が苦手な方は、GUIによる操作・設定を勉強するために、ヤマハルーター実践ガイドを買おう!
と思われるかもしれませんが、これはおすすめしません。
理由は簡単で、この本ではwebGUIによる操作についてはほとんどふれられておらず、勉強ができないからです。(数ページ書かれている程度)
webGUIによる操作については、ヤマハさんのwebサイトから詳しい取扱説明書のPDFがダウンロード可能なので、それを使って勉強すると良いでしょう。
ヤマハさんのコマンドリファレンスと一緒に参照すれば、たいていのことは理解・設定できるようになる!
今回ご紹介したヤマハルーターの設定に関する解説本、ネットワークエンジニアのためのヤマハルーター実践ガイドを読めば、ヤマハルーターの設定についてはそれなりのレベルまでは理解・設定できるようになるはずです。
ただこの本だけでは足りない部分ももちろんあるので、分からない部分や資料が少ない部分については、ヤマハさんのコマンドリファレンスを参照すると良いでしょう。
ぜひこの本とコマンドリファレンスを参考に、いろいろな設定を試して勉強してみてくださーい!
補足:ヤマハさんはルーター以外のネットワーク機材も作っています!
ヤマハさんのネットワーク機材と言えばルーターが特に有名ですが、その他にもL2スイッチや無線LANアクセスポイント製品も製造しています。
L2スイッチ製品の例:
無線LANアクセスポイント製品の例:
これらの機材については、ヤマハのネットワーク機材は高品質で比較的安価なのでおすすめ!にてご紹介しているので、興味がある方は併せてご覧ください!